プリズムの煌めきを探して

@shohei_tpcのブログです

両角「どうすりゃいいんだ・・・」

東京・大手町で迎えた箱根駅伝
黄金世代が卒業し、4年生3本柱を往路に投入するも3位、復路も勢いを見せず惨敗だった
正月のお茶の間に響くファンのため息、どこからか聞こえる「来年はシード権争いだな」の声
無言で帰り始める選手達の中、一昨年の総合優勝監督両角速は独り運営管理車で泣いていた
都大路・箱根で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の東海で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」両角は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、両角ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、暗い運営管理車の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」両角は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、両角はふと気付いた

「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
運営管理車から飛び出した両角が目にしたのは、大手町から芦ノ湖まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように東海大学建学の歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする両角の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「モロさん、1区スタートだ、早く行くぞ」声の方に振り返った両角は目を疑った
「お・・・鬼塚さん?」  「なんだモロ、居眠りでもしてたのか?」
「た・・・湊谷元主将?」  「なんだ両角先生、かってに湊谷さんを引退させやがって」
「館澤・・・」  両角は半分パニックになりながら区間エントリーを見上げた
1区:鬼塚 2区:湯澤 3区:西川 4区:館澤 5区:西田 6区:内川 7区:阪口 8区:小松 9区:湊谷 10区:郡司
暫時、唖然としていた両角だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
主務からマイクを受け取り、運営管理車から声掛けする両角、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った